平成14年6月30日朝刊
なひたふ新聞 電子回路が大好きな趣味人「なひたふ」のWebサイト
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maru電子回路の豆知識
第0章 基本の豆知識
第1章 部品の豆知識
ツェナーダイオード
半固定抵抗
FETとMOSFET
2SK241
コレクタ飽和電圧
ACアダプタ
5線抵抗カラーコード
タンタルコンデンサ
1/3の水晶
第2章 個別半導体の豆知識
第3章 オペアンプ回路の豆知識
第4章 ディジタル回路の豆知識
第5章 コネクタと規格の豆知識
第6章 画像信号の豆知識
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平成10年2月28日発行.第三種郵便物不認可
水晶発振回路の豆知識
水晶振動子  ある日のこと、27MHzの水晶発振回路を作っていました。オシロで確認したところ水晶は発振しているが、回路はちゃんと動作しない。なぜだろう・・・
 良く見ると、発振周波数がおかしい。マイオシロは時間軸が精確でないから良くわからないが9MHz前後だろう。9MHz!?、3分の1の周波数で発振している!?

 実は、使った水晶は3倍のオーバートーンで発振させるべき水晶だったのです。水晶はオーバートーン発振と言って、決められた周波数の3倍や5倍の周波数でも発振することができるのです。発振回路の増幅器が3倍や5倍の周波数でも増幅できるだけの能力(高周波特性)を備えていれば、オーバートーンの周波数で発振してしまいます。
 27MHzの発振回路に使っていたインバータが74HC04だったので、それを74AC04に変えたところ、今度は45MHzで発振してくれました。仕方なく、コンデンサの値をいろいろ変えたり、抵抗を挿入したりして何とか27MHzの発振を得ることができるようになりました。
 秋葉原の某有名パーツショップで買ったこの水晶は27MHzという棚に入っていたのに、オーバートーンとは一言も書いてありませんでした。

 秋葉原で水晶発振子をいっぱい買って、さまざまな定数で発振の実験をおこないました。ここでは水晶発振回路に関する豆知識+実験結果を紹介します。

  1. 水晶発信回路の基本
    1. オーバートーンとは
    2. 水晶発振周波数の話
  2. 水晶発信回路の実際
    1. IC内部の発振回路を利用する場合
    2. ロジックICを利用する場合
    3. コンデンサの値の決め方
    4. R1の役割
    5. オーバートーンを制御するためには
  3. 街で売っている水晶で実験
    8MHz 12MHz 16MHz 19.6608MHz 20MHz 24M(1) 24M(2) 24.576MHz 25MHz 27MHz 50MHz
  4. 使用上の注意
 
水晶発振回路の基本
 回路図を目で追っていって、抵抗やコイルやコンデンサの役割は理解できても、水晶があるとつい飛ばしてしまいがちです。水晶は電気的に見ればいったい何なのでしょうか?

水晶発振回路の基本的特性  直流や低周波など、周波数がとても低い時には水晶はコンデンサとして動作します。周波数が徐々に上がっていくと、そのコンデンサの大きさが徐々に減り、あるとき純粋な抵抗のように見える共振周波数frが出現します。このときインピーダンスは極小となります。
 この周波数frからさらに上げていくと、水晶はコイルとして振る舞います。どんどん上げていくとインピーダンスが極大となる反共振周波数faがあらわれ、その後はまたコンデンサとして動作するようになります。
 frfaの間の周波数では、水晶はコイルとして働き、共振周波数では抵抗として働き、それ以外の周波数ではコンデンサとして働きます。このように水晶は周波数によって性質を変える不思議なデバイスなのです。

水晶発振回路の等価回路  共振周波数に近いとき、水晶は右図の等価回路であらわされます。共振回路のQは
Q=ωL/R=ω/C1R
であらわされます。このQの値は数万と大きく、セラミック振動子などの他の素子とくらべ非常に大きな値となっています。このため、他の発振回路に比べて極めて安定しています。

 普通の水晶発振回路では周波数がfrfaの間のコイル性を利用して、LC共振回路を構成して使用します。しかし、このfrfaの間はとても狭く、共振回路の周波数はほとんど可変させることはできませんが、逆にいえば変動しにくいといえます。
 なお、このコイル性を持つ周波数の範囲はC0とC1の容量比で決まるので、水晶に直列や並列でコンデンサをつなぐと、さらに狭くすることができます。

水晶発振回路と負荷容量  多くの回路は水晶に並列にコンデンサを2つ付けて、共振回路をつくります。2つのコンデンサの合成容量をCLとすると、C0とCLが並列になります。これを負荷容量といい、負荷容量を変化させることで、水晶がコイル性を有する周波数範囲内で周波数を微調整できます。
 逆にいえば、勝手に周波数が変わってしまうこともありえるわけです。
オーバートーンとは
オーバートーン 高校物理で学んだように、バイオリンの弦は基本共振周波数の整数倍の周波数でも共振します。それと同じように水晶も高次の周波数で振動させることができます。
 しかしながら水晶の振動周波数は奇数倍なので、例えば8MHzの水晶であれば、24MHzや40MHzで振動することができます。とはいっても、高次のモードで振動できるかどうかは、モノによって異なりますので、検証が必要です。
 また、オーバートーンの周波数は必ずしも基本波に対して整数倍になるとは限りません。
水晶発信回路の周波数の話
水晶発振回路の原理
 水晶とコンデンサで共振回路をつくり、その共振回路にアンプをつなぐことで持続した発振をおこなう回路が水晶発信回路です。この回路では水晶が共振できる周波数は決まっているので、アンプがどの周波数を選択するかで発振周波数は決定されます。

 次の図は、水晶のインピーダンス特性のグラフです。水晶のインピーダンス特性は、共振周波数とその奇数倍ごとに急激に変化します。この周波数で水晶は発振することができます。
水晶の電気的特性

 実際に発振させるには、その周波数の信号を増幅できるアンプが必要になります。次の図を見てみましょう。
水晶の電気的特性2

 いま、3種類のアンプがあるとします。アンプ@の周波数特性は上の図で青色の線のようになっています。アンプAの周波数特性は上の図で緑色の線のようになっています。アンプBの周波数特性は上の図で茶色の線のようになっています。

 まず、アンプ@を水晶につないだ場合、このアンプの周波数特性は2fの付近で落ちていますので、この水晶発振回路は基本周波数fで発振します。
 なぜなら、アンプ@の増幅可能な周波数帯域の中に、水晶が共振できる周波数がfしかないからです。

 アンプAを水晶につないだ場合、このアンプの周波数特性は5fの手前で落ちていますので、この水晶発振回路は基本周波数fで発振するか、3fで発振するかはわかりません。
 なぜなら、アンプAの増幅可能な周波数帯域の中に、水晶が共振できる周波数が2つもあるからです。このような場合、どちらの周波数で発振するかは決まっておらず、さらに別の要因によって発振周波数が決まります。困ったことに、発振周波数が突然変わることもあります。電源投入時の発振周波数も不明です。このような場合、どちらかの周波数が優勢になるように回路に細工を加えます。

 アンプBを水晶につないだ場合、このアンプが増幅できる水晶の発振周波数は7fだけなので、共振周波数の7倍で発振する可能性があります。もしくは、全く発振しないかも知れません。次数の高い発振は不安定であるからです。

 
水晶発振回路の実際
 次に、いろいろな場面で遭遇する水晶発振回路を見ていきましょう。  
ICの内部の発振回路を利用する場合
ICに内蔵の水晶発振回路  ベストな水晶発振回路は、ワンチップマイコンなどに内蔵されている発振回路です。たとえば、XTAL1,XTAL2のように2本の線が出ていて、マニュアルに記載されたとおりの周波数の水晶と、記載された通りの容量のコンデンサをつなげば大抵の場合は発振してくれます。それでも発振しない場合は、水晶のカットが違うか、水晶のオーバートーンの関係か、もしくは配線の引き回しが悪い場合です。
 とにかく、マニュアルどおりに作ればうまくいきます。
 
ロジックICを利用する場合
 自前でデジタルの発振回路を組む場合、CMOS-ICを使ったほうが良いでしょう。CMOS-ICは内部の構造上、上下が対象に作られているので電源電圧の半分が入力の閾値になります。そのため、発振のデューティー比が50%に近くなります。TTLでは入力Lレベルが0.8V付近に、Hレベルが2.0V付近ですので非対称なので発振回路を作るのは多少難しくなります。 自前の水晶発振回路
 74シリーズのロジックICでは、HCシリーズやACシリーズはCMOSです。ABT、LS、ALS、FシリーズはTTLです。ACTシリーズはCMOS構造ですが、入出力レベルがTTLなのでうまくいきません。HCTも同様にTTLレベルなので避けるべきです。また、HCシリーズもゲインが高いので水晶発振回路には不向きです。HCUシリーズはHCシリーズと似ていますが、内部のバッファの段数が低く、要するに増幅度が小さいので緩やかな増幅をしてくれます。水晶発振回路のようなアナログ回路には向いています。結局、HCUシリーズやACシリーズのインバータ(74HCU04,74AC04)を使うのがよいでしょう。

 発振周波数が20MHz以下ならばHCUを、30MHz以上ならばACを使うとよいかと思います。その中間は微妙です。実際に試した例を後述します。  
C1とC2の値の決め方
 デジタル回路に使う水晶発振回路では、インバータが増幅回路の役割をします。その増幅度はコンデンサの容量の比に比例します。
増幅度∝C2/12
 また、C1とC2の直列容量C1*C2/(C1+C2)は水晶から見た負荷容量になります。水晶は発振回路の中ではコイルとしての働きをしますので、共振回路をつくるためにコンデンサが必要なわけです。そこで、このコンデンサの値を変えれば水晶発振回路の周波数を微調整することができます。そのために、C1をトリマーにすることもあります。
 このコンデンサの値は、発振周波数にもよりますが、15pFから33pF程度がよいと思われます。多くの場合は適当でもいいのですが、値の設定の仕方がまずいとオーバートーン発振をしてしまったり、してくれなかったりします。街で買ってきた水晶を使うときには、カットアンドトライで決めます。

 なお、コンデンサの値は0〜68pFくらいの範囲ならどのような値でもたいていは発振するのですが、一般的には22pFが人気です。でも実際に実験してみたところ、47pFや68pFなど、大きい値のほうが指で触れても発振が持続するなど、安定度は増すようです。  
R1の役割
自前の水晶発振回路  R1はアンプのゲインを下げるネガティブフィードバックで、1MΩくらいの抵抗を選択します。
 ところが、この抵抗にはネガティブフィードバック以外にも重要な意味があるようです。どうやらこの抵抗がないと、電源投入後に発振を開始してくれないようです。
 この抵抗がないときには、指で触るなどして刺激を与えないと発振しませんでした。  
オーバートーンを制御するためには
  1.  まず、水晶を選びます。オーバートーンしやすい水晶としにくい水晶がありますので、よく取捨選択することが大切です。

  2.  次に、望みの周波数において、ベストな周波数特性を持つアンプを選択することです。デジタル回路のクロック発振用では、インバータを使ってアンプを作りますが、使うICの種類によっても発振周波数が変わります。例えば74HCUシリーズでは、およそ20MHzまでの発振を得意とします。40MHzや60MHz、さらに高い周波数でのオーバートーン発振を狙うなら、74ACシリーズを使うことも考えます。なお、発振回路に使う場合では74HCUシリーズと74HCでは全く特性が異なってきますので注意が必要です。さらに、74HCTシリーズはもっと違う特性を持っています。
     単純にいうと、74HCU < 74HC < 74ACの順に得意とする周波数特性が変わってきます。

  3.  第三に、水晶発信回路に使うコンデンサの容量を変えます。
     単純にいうと、容量の大きいコンデンサ(47〜68pFくらい)を使うと、40MHz〜100MHzでは発振しにくくなります。高い周波数にとってコンデンサは重いらしいのです。
     また、2つのコンデンサの比によってCMOSインバータの増幅度は変わりますので、その増幅度を上げればオーバートーンしやすくなり、下げればオーバートーンしにくくなります。
     50〜100MHzくらいでオーバートーンをさせたければC1に10〜15pFくらいを、C2に33pFくらいを使うと、うまくいく可能性が高いです。

  4.   第四に、水晶に直列に挿入する抵抗R2の値によって、オーバートーンを制御する方法があります。
    抵抗を入れた回路 この方法では抵抗R2があるとオーバートーン発振をしにくくなると言われています。その回路を右に図示します。

     いざ回路を設計しようとなると、この抵抗R2の値はどれくらいが良いのだろうかと考えてしまいますが、理論的に考えれば、望みの共振状態における水晶の直列等価抵抗と、アンプのもつ負性抵抗があって、負性抵抗を弱らせるためにいれるわけですから、そんなのを真面目に考えるときりがありません。
     数百〜数kΩを入れて、カット・アンド・トライです。

    間違えた回路1  ところで、以前書いた「水晶発振回路の豆知識」では回路を間違っていて、右の図のようになっていました。良く見ると抵抗の位置が違いますね。



    間違えた回路2  そこで今回、実際に右の図の回路を製作し、その値を可変させて発振状況を見る実験をおこないました。ところが、この実験回路も回路が間違えており、そのまま実験をおこなってしまいました。

     間違いに気がつかずに実験したのですが、面白い結果となりました。抵抗がゼロの時には基本波しか発振できない回路でも、R1が2kΩ〜6kΩになれば3倍で共振させられることがあるのです。さらに抵抗の値を微調整すれば5倍や7倍で共振することもありました。原因は良くわかりません。
     この実験の結果ですが、74HCU04では抵抗の値が200Ω程度になるとループの増幅度が足りなくなって、発振しなくなる現象も起きました。74HCやACシリーズではそのようなことにはなりませんでした。

  5.  どうしても、オーバートーンがおさまらないときには、C1に並列にLC共振回路を入れるという最後の手段もあります。
    オーバートーン最後の手段  この共振回路がオーバートーンの周波数に設定されていて、直列共振によってオーバートーンの周波数をグラウンドに落とすことで発振を抑えたり、逆に並列共振によってオーバートーンの周波数の選択度を上げたりします。
     きっと、難しいでしょう。

 
街で売っている水晶で実験
 秋葉原で手に入れたさまざまな水晶の実力をチェックします。
 実験には下の図のような回路を製作して、ICや水晶はもちろん、コンデンサの値や抵抗の値まで自由に設定できるようにしました。
実験のために製作した回路
 いろいろ実験した結果、
  1. 全体的に、容器が扁平な長型水晶より、短型水晶のほうが安定して発振する。
  2. C2>C1にすれば必ずしもオーバートーンするわけではない。
  3. 高い周波数で発振させたいなら、あまり大きなコンデンサを選択してはいけない。
  4. 必ずしも74ACシリーズが高次のオーバートーンをさせやすいわけではない。
  5. コンデンサの容量が小さいと、指で触ったときに発振不能になりやすい。
と結論します。

 ただし、下記の実験は私がたまたま1つだけ購入した水晶でおこなった実験に基づいています。 水晶の個体差もあるでしょうし、間違いもあると思いますし、水晶メーカーの言い分も販売店の言い分もあると思います。 そのため、この実験結果のご利用による結果は一切保証しません。 皆様自身の責任においてご使用ください。
短型 8M水晶
8M水晶  この水晶は8MHzで発振します。いろいろ頑張ってみましたが、オーバートーンで発振させることはできませんでした。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。
74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし 8MHz/不安定     
10pF8MHz/不安定不安定 不安定  不安定
15pF      8MHz
22pF  8MHz  8MHz   8MHz
33pF  8MHz     
47pF  8MHz  8MHz  8MHz8MHz
68pF      8MHz
 この水晶は74ACの実力をもってしてもオーバートーンしてくれません。逆にいえば、安定した8MHzがほしいときにはベストでしょう。  また、47pFくらいのコンデンサを使うと、水晶の足を指で触れても発振をしてくれます。つまり、丈夫になるというわけです。
74HCU04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし8MHz      8MHz
10pF       
15pF       
22pF8MHz 8MHz  8MHz  8MHz  
33pF       
47pF       
68pF8MHz     8MHz 8MHz
 74HCU04を使った場合、C1やC2のコンデンサを接続しなくても発振をしてくれます。
 この水晶は極めて安定して発振してくれます。
長型 12MHz
12M水晶  この水晶は12MHzで発振します。12MHzになったり、36MHzになったり、いろいろな周波数で発振する楽しい水晶です。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

 なお、下の表で「/」は、複数の周波数で発振が起こりうるということを表します。
74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし× 12 12 12 12 12 12
10pF36/不安定36/不安定12 12/3612/36/6012/3612/36
15pF12/3612/8436/1236/60121212
22pF36 36 3612/3612/361212
33pF12363612/36 1212
47pF 363612/3612/36  
68pF36 36 12/3612/3612/3612
回路を間違えると7倍オーバートーンの84MHzで発振させることもできました。
74HC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし36MHz36MHz 36MHz 12MHz 
10pF12/3612/36 36MHz 12MHz 
15pF       
22pF12/36/6012/36 12/3612/3612MHz 
33pF    12/3612MHz 
47pF12/3612/36 12/3612/3612MHz 
68pF       
基本的には12/36MHzの混在で発振します。
74HCU04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし12MHz12MHz 12MHz 12MHz 
10pF12MHz12MHz 12MHz 12MHz 
15pF       
22pF12MHz12MHz 12MHz 12MHz 
33pF       
47pF12MHz12MHz 12MHz 12MHz 
68pF       
12MHzで安定して発振します。C2に47pFを使った場合では、指で触れても発振を持続するくらい丈夫です。
74HCT04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし36MHz36MHz 36MHz 12MHz 
10pF36MHz36MHz 36MHz 12MHz 
15pF       
22pF36MHz36MHz 36MHz 12MHz 
33pF36MHz36MHz 36MHz36MHz12MHz 
47pF36MHz36MHz 36MHz 12MHz 
68pF       
C1に47pFを選べば12MHzで発振しますが、それより小さいと36MHzで発振するようです。
短型 16MHz
16M水晶  この水晶は16MHzで発振します。通常は16MHzのみで発振しますが、間違った回路で抵抗をつなぐとオーバートーンします。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF155MHz    16MHz  
15pF       
22pF 16MHz  16MHz  16MHz  
33pF       
47pF       
68pF 16MHz    16MHz  
155MHzはおそらく別の原因の発振です。普通の使い方をすれば16MHzでちゃんと発振してくれる安定した回路がつくれます。
短型 19.6608MHz
19.6608MHz水晶  この水晶は19.6608MHzで発振します。19.6608=19.2*1024kHzです。この水晶はオーバートーンさせることはできませんでした。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF      19.6MHz
15pF 19.6MHz     
22pF   19.6MHz   
33pF       
47pF       
68pF 19.6MHz 19.6MHz   
指で触っても発振を持続する極めて安定した発振回路がつくれます。
短型 20MHz
20M水晶  この水晶は20MHzで発振しますが、条件によっては60MHzでオーバートーンさせることもできます。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

 なお、下の表で「/」は、複数の周波数で発振が起こりうるということを表します。
74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし60MHz       
10pF       
15pF       
22pF 20MHz 20MHz 20MHz 
33pF60MHz60/20MHz 20MHz/不20MHz  
47pF60MHz20/60MHz20/60MHz 20MHz 20MHz20MHz  
68pF 60MHz 20/60MHz 20MHz  
*このICでのコメント。
長型 24MHz
24M水晶  この水晶は24MHzで発振しますが、どうやら基本波8Mの水晶のようです。がんばれば40MHzでも発振します。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

 なお、下の表で「/」は、複数の周波数で発振が起こりうるということを表します。
74HCU04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし24MHz      
10pF       
15pF  8MHz   8MHz
22pF 8MHz  8MHz 8MHz 
33pF       
47pF   8MHz   
68pF 8MHz 8MHz  8MHz  
 74HCUシリーズを使用した場合は基本波で発振しやすく、24MHzでの発振は難しいようです。
74HC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF       
15pF       
22pF 8MHz8/24MHz8/24MHz   
33pF   8/24MHz   
47pF  24MHz    
68pF  8/24MHz    

74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし 無発振    
10pF       
15pF24MHz   24MHz
22pF カオス24MHz 24MHz 24MHz
33pFカオス24MHz    8/24MHz
47pF  24MHz 24MHz 8/24MHz8/24MHz
68pF8M/不   24MHz 8/24MHz
*「不」は不安定を意味します。74ACを使って電源投入時にも安定に発振させるには、大きめの負荷容量が必要なようです。
この水晶と74ACを使った発振器はおすすめできません。
74HCT04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF       
15pF       
22pF 8MHz8/24MHz8/24MHz   
33pF   8/24MHz   
47pF  24MHz     
68pF  8/24MHz    
短型 24MHz
24M水晶  この水晶は24MHzで発振します。前述の長型24MHz水晶とちがい、オーバートーンすることはありませんでした。基本波の周波数も24MHzですので、8MHzになったりすることもありません。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF       
15pF 24MHz      
22pF   24MHz    
33pF       
47pF       
68pF 24MHz  24MHz  24MHz 24MHz
指で触っても発振が持続します。極めて安定した発振回路がつくれるでしょう。
短型 24.576MHz
24.5MHz水晶  あまり深くは試しませんでしたが、この水晶は24.576MHzで発振します。オーバートーンすることはないようでした。なお、24.576MHz=24×1024kHzです。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF       
15pF       
22pF   24.5MHz    
33pF       
47pF       
68pF 24.5MHz 24.5MHz24.5MHz    
発振中に指でふれても発振が持続する、極めて安定した発振回路がつくれます。
短型 25MHz
25M水晶  この水晶は25MHzで発振します。オーバートーンをさせることは難しく、とても安定している良い水晶です。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

74HCU04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
10pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
15pF       
22pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
33pF       
47pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
68pF       
とても安定しています。
74HC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
10pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
15pF       
22pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
33pF       
47pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
68pF       
とても安定しています。
74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし25MHz/不25MHz  25MHz  25MHz  
10pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
15pF       
22pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
33pF       
47pF25MHz 25MHz  25MHz  25MHz  
68pF       
負荷容量がない場合、多少不安定になります。
長型 27MHz
27M水晶  この水晶は27MHzで発振しますが、基本波は9MHzです。がんばれば45MHzにもなります。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

 なお、下の表で「/」は、複数の周波数で発振が起こりうるということを表します。
74HCU04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし27MHz 27MHz 9/27MHz9MHz 27MHz 27MHz  
10pF27MHz 27MHz 9/27MHz9/27MHz9MHz9/27MHz 
15pF       
22pF9/27MHz9/27MHz9/27MHz9/27MHz9MHz9MHz 
33pF27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 9MHz 9MHz  
47pF       
68pF9/27MHz27MHz27MHz9/27MHz9MHz 9MHz  
電源投入時や、抵抗値を変えた場合に9MHzになったり27MHzになったりするので、27MHzの安定発振は簡単ではありません。
74HC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし45MHz 27/45MHz27MHz27/45MHz27/45MHz27/45MHz 
10pF27/45MHz27/45MHz27/45MHz27/45MHz27/45MHz27/45MHz 
15pF27/45MHz/不27/45MHz/不27/45MHz27/45MHz27/45MHz27/45MHz 
22pF27MHz/不27MHz27MHz27MHz27MHz 
33pF27MHz27MHz27MHz27MHz27MHz 
47pF       
68pF       
74ACよりも高次のオーバートーンをしやすいようです。「不」は不安定を意味します。
74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし無発振27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz  
10pF27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz  
15pF27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz  
22pF27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz  
33pF27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz 27MHz  
47pF       
68pF       
うまくいきます。
短型 50MHz
50M 水晶  この水晶は50MHzで発振しますが、基本波は16.65MHzのようです。コンデンサの容量が大きいと基本波になってしまいます。
 C1をインバータの入力側、C2を出力側コンデンサの容量として、その値と発振周波数の関係を実験しました。

 なお、下の表で「/」は、複数の周波数で発振が起こりうるということを表します。
74AC04使用
↓C2\C1→なし10pF15pF22pF33pF47pF68pF
なし       
10pF       
15pF 50MHz 17/50MHz    
22pF   17/50MHz   
33pF       
47pF 17/50MHz     
68pF 17/50MHz17/50MHz17MHz 17MHz  
74ACシリーズを使った場合、電源投入時にも50MHzを確実に発振させることは難しいようです。抵抗が必要になるのでしょう。

まとめと使用上の注意
 最後に、水晶使用上の注意を簡単にまとめます。
  1. 配線は短く
     水晶発振子への配線は電気的にデリケートなので、丁寧に配線してください。水晶周辺回路の下に、別の信号を這わせることは禁物です。
  2. 水晶の金属容器ははんだ付けしてはいけない
     金属容器に直接はんだ付けすると、熱で特性が変わってしまうことがあります。容器は接地するのが良いのですが、直接はんだづけしないようにしましょう。
  3. 74HCU04が基本
     自分で発振回路を作るときには、バッファの入っていないHCUタイプを選択しましょう。
  4. オーバートーンか基本波か
     オーバートーン用の水晶はオーバートーンで、基本波は基本波で発振させるのが原則です。特性も保証されませんし、必ずしも整数倍の周波数になっているとは限らないからです。
  5. 電源電圧に注意
     電源電圧が変動すると、発振周波数も微妙に変わります。簡単なマイコンでは問題にはならないでしょうが、VCOや通信用途ではご注意ください。
  6. 正確な周波数と負荷容量
     特注の水晶ならともかくお店で買ってくる市販の水晶では、正しい負荷容量や温度係数がわかりませんので、公称周波数で精確に発振させることは難しいです。
  7. 機械的な衝撃に注意
     見た目はガラスと同じです。同様に機械的な衝撃に弱いです。
  8. 可能なら発振子ではなく発振器がよい
     いろいろ書いてきましたが、1 安定して2 確実に3 正しい周波数で発振させるのは難しいです。可能ならば発振回路入りの水晶発振器を選択しましょう。
  9. 望みの周波数が無いときには
     PLL内蔵の水晶発振器というものがあります。望みの周波数で発振するようにカスタマイズしてくれる水晶発信器です。これは秋葉でも売っていて、個人相手でも1000円くらいでプログラムして売ってくれますので便利です。そのお店ではいろいろなオプションの選択をしなければなりませんが、とりあえず「電源は5V、パッケージは無指定、温度特性も無指定、精度も無指定、スタンバイタイプ」と言えばいいでしょう。
平成14年6月30日 rev 2