JFET、MOSFET(エンハンスメント、デプレッション)、それぞれの違い
トランジスタ回路の設計ならできるけど、FETはちょっと苦手という人はおおいのではないかと思います。その理由の一つにはFETには接合型(J-FET)やMOS型があり、さらにMOS型の中にはエンハンスメントやらデプレッションやらあってややこしいからではないかと思います。またFETはよく「負の電圧をかけなければならない」と紹介されますので、先入観から敬遠してしまいがちです。
そこで、FETはトランジスタと同じように使いやすい部品なんだぞということを紹介するために、このページを書きました。
FETの図記号
J-FET(ジャンクション:接合型)の回路図での記号は下の図のように書きます。
名前 |
N-channel JFET |
P-channel JFET |
図記号 |
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MOS-FET(モス:金属酸化物の意味)の回路図での記号は下の図のように書きます。
名前 |
N-channel MOSFET |
P-channel MOSFET |
図記号 |
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JFETとMOSFETで矢印の向きが違うと思われるかも知れませんが、これはこれでよいのです。MOSFETにはエンハンスメント型とデプレッション型がありますが、それは図記号には現れません。
FETの特性(VGS-ID特性)
次に各FETの特性ですが、NチャネルのFETではゲートにかける電圧(ソースを基準にした電圧、VGSという)が高いほどドレイン・ソース間に電流が流れやすくなります。これはJFETでもMOSFETでも同じです。
N-JFET |
NMOS(デプレッション) |
NMOS(エンハンスメント) |
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どうでしょう。どのFETも基本的には同じような特性です。ただ、電流が流れはじめる電圧がそれぞれ違うだけなのです。JFETやMOSデプレッション型ではゲート電圧を低くしていくといずれは電流が流れなくなる点があります。これをピンチオフ電圧といいVpであらわします。また、ゲート電圧が0の時の電流はIDSSといって、FETの特性をあらわす重要なパラメータになっています。
次にPチャネルFETの特性です。トランジスタにNPNとPNPがあるようにFETにもNチャネルとPチャネルの二種類の製品があります。本当にNPNとPNPの関係のように電圧のかけ方が逆になるだけです。
P-JFET |
PMOS(デプレッション) |
PMOS(エンハンスメント) |
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おもしろい使い方
Nチャネル・エンハンスメント型のMOS-FETはVGSが正の領域でドレインに電流が流れます。ということは、これは普通のNPNトランジスタと同じように使うことができるということです。実際にNPNトランジスタをMOSFETでそのまま置き換えてしまっても動く場合は多いです。
- Pチャネル・エンハンスメント型のMOS-FETはPNPトランジスタを置き換えます。
- これらはゲート電圧で流れる電流をスイッチすることができるので、最近ではパワーMOSFETというのが非常によく使われるようになりました。基本的にはスイッチングトランジスタと同じように使っています。
- デプレッションのMOSFETはゲート電圧0で完全OFFにならないので、あまりスイッチには向きません。
- JFETはどう頑張ってもIDSSより大きな電流を流すことができないので、スイッチ目的にはあまり使われません。MOSFETはゲート電圧を高くすればいくらでも大きな電圧が流せます。
JFETはゲートに逆バイアスをかけることで動作をさせますが、ゲート・ドレインソース間のダイオードがONしないような微小な順方向電圧をかければ、IDSSはもう少し流せます。(つまりちょっとだけデプレッション型のFETのようにできる。)
おぼえかた
さて、いろいろと出てきましたが、どうやって覚えれば楽でしょうか。私の場合は、JFETは逆方向バイアスが基本と覚えています。デプレッションは「落ち込んでいる」と考えて、VGSが0の領域をまたいだ特性、と覚えています。エンハンスメントは「拡張」してしまって、正の領域でしか動かないと覚えています。
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