200mA流したければ、ベース電流を2mAに増やせばいいのです。すると、頑張っていたトランジスタも少し妥協して200mAまでは流してくれるようになります。このときは前述の電圧降下が下がったからとも考えられます。
トランジスタをスイッチとして使いたい場合には、コレクタエミッタ間の電圧降下なんか無い方がいいに決まっています。では、ベース電流をいっぱい流せば、コレクタ−エミッタ間の電圧降下はもっともっと下がってゼロになるのでしょうか?
答えはゼロにはなりません。その電圧がコレクタ−エミッタ間飽和電圧です。これはVce(sat)とも書かれます。satとはsaturation、つまり飽和の意味です。飽和とはベース電流のHfe倍のコレクタ電流を流せるはずなのに、それ以下のコレクタ電流しか流していないことを言います。たとえば、Hfeが100のトランジスタのベース電流を10mA流して、コレクタ電流を20mAしか流していない状態では飽和です。このときにコレクタとエミッタ間に生じる電圧降下がVce(sat)なのです。
トランジスタのデータシートでIC-VCE特性を見たときに、最初に縦になっている部分の電圧がそれです。この値は、電力用の大きいトランジスタほど小さく、グラフの傾きは急峻になる傾向があります。逆に小さなトランジスタではVce(sat)は大きくなる傾向があります。また、Vce(sat)は流すベース電流によっても多少変わってきます。大きなベース電流を流せばより大きなコレクタ電流までVce(sat)を小さくできます。
トランジスタにスイッチのような動作をさせるときにはこの点に気をつけるとよいでしょう。