コレクタエミッタ間飽和電圧にご注意!

トランジスタはベースに電流を流すと、そのHfe倍のコレクタ電流が流れます。トランジスタを使ってスイッチング動作をさせるときには注意点がいくつかあります。

コレクタエミッタ間飽和電圧

 トランジスタはベース電流のHfe倍のコレクタ電流を流すことができます。たとえば、Hfeが100のトランジスタにベース電流を1mA流せばコレクタ電流は100mAまで流すことができます。この時に電圧を上げるなりして無理矢理200mA流そうとしても200mAの電流は流れません。それはトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧降下が大きくなるからです。あたかもトランジスタが「流すまい」と頑張っているような感じになります。電圧が増えた分をコレクタ−エミッタ間の電圧降下も増えるので、結局流れる電流は変わらない、そんなイメージです。

 200mA流したければ、ベース電流を2mAに増やせばいいのです。すると、頑張っていたトランジスタも少し妥協して200mAまでは流してくれるようになります。このときは前述の電圧降下が下がったからとも考えられます。

 トランジスタをスイッチとして使いたい場合には、コレクタエミッタ間の電圧降下なんか無い方がいいに決まっています。では、ベース電流をいっぱい流せば、コレクタ−エミッタ間の電圧降下はもっともっと下がってゼロになるのでしょうか?

 答えはゼロにはなりません。その電圧がコレクタ−エミッタ間飽和電圧です。これはVce(sat)とも書かれます。satとはsaturation、つまり飽和の意味です。飽和とはベース電流のHfe倍のコレクタ電流を流せるはずなのに、それ以下のコレクタ電流しか流していないことを言います。たとえば、Hfeが100のトランジスタのベース電流を10mA流して、コレクタ電流を20mAしか流していない状態では飽和です。このときにコレクタとエミッタ間に生じる電圧降下がVce(sat)なのです。

どの位の大きさか?

 このVce(sat)は多くのトランジスタでは1V以下のとても小さな値ですが、ダーリントントランジスタでは2段目のトランジスタのベース−エミッタ間電圧VBEが余計に加わってきますので、Vceは決して0.7V程度以下にはなりません。

 トランジスタのデータシートでIC-VCE特性を見たときに、最初に縦になっている部分の電圧がそれです。この値は、電力用の大きいトランジスタほど小さく、グラフの傾きは急峻になる傾向があります。逆に小さなトランジスタではVce(sat)は大きくなる傾向があります。また、Vce(sat)は流すベース電流によっても多少変わってきます。大きなベース電流を流せばより大きなコレクタ電流までVce(sat)を小さくできます。

 トランジスタにスイッチのような動作をさせるときにはこの点に気をつけるとよいでしょう。


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