
Z380というのはザイログ社が開発したCPUで、Z80とバイナリレベルで完全上位互換性を保ちつつ、32bitに拡張されたCPUです。動作速度は当時としては非常に高速で、恐らく80386と同程度の能力はあったと思います。レジスタも豊富で、Z80が4つ入っているような感じでした。消費電力も少なく組み込み制御には最適なCPUだと思います。しかし、入手が限りなく困難で、現在ではもはや手に入らないでしょう。現在はZ382という周辺ペリフェラルを内蔵したCPUにバージョンアップしているらしいのですが、詳しいことは知りません。
私は昔からZ80を育ってきたので、Z380の完全上位互換32bitCPUと聞くと何かを作りたくなって仕方がなかったのですね。で、組み込み制御用マイコンボードを作ってみました。Z380に高速のSRAMが128kByte載ってクロックは16MHzで動いています。PIOは8255、UARTは16550、それにUPP63140が載って豪華なボードでした。
最初は早いMSXパソコンを作りたかったのですが、途中から組込み制御用マイコンになっていました。何を制御するのかわかりませんが・・
しかし、ある真夜中のことです。私は東工大ロボット技術研究会の部室で徹夜でデバッグを続けていました。夜もふかまったころ、私は疲れていたせいかうっかり電源を逆につないでしまったのです。基板にはMOLEX製のコネクタがついていて、そこから赤と黒の電源線が出ているので間違えようもないのですが、「赤と黒」が互いにつながっている方が奇麗だなぁ、とか考えながら作業していたからでしょうか、どういう訳か電源を逆につないでしまったのです。
CPUはもくもくと煙を吹いて焼けました。ものすごい発熱で、CPUは触れないほど熱くなりました。私は思わず「やべっ!」と叫びました。すぐに電源を切り、冷ましてから電源を元に戻してもCPUはうんともすんともいいません。まったく動作しなくなりました。CPUは死んだのです。
ちょうどその晩、サークルの部室では、大富豪の北田様という友人がビデオをご観覧になられていました。ポリスアカデミーのトイレに乗って空を飛ぶやつで、別に見る必要もないようなビデオをついレンタルしたために、ご覧になっていたそうです。
私が「CPUが死んじゃった」というと、CPUが燃える一部始終を見ていた北田様は、テレビを見ながらのほほんと、気にも留めぬ様子でこういいました。
「そうか、祝杯の準備じゃ」
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