ビデオ回路では、IREという単位で電圧をあらわします。これは規定の映像レベルを100とした電圧を示す単位なのですが、どうしてこのような面倒な単位を使うのでしょうか?それは下の図をみてください。
ビデオ信号は上の図のようにして伝送されます。注意すべきは信号の伝送路がコンデンサでカップリングされていることです。このため、ビデオ信号の基準電位は一定しないので、直流の電圧レベルでは表現できないのです。そこで誰でも交流の振幅であらわすことを考えるでしょう。しかし、ビデオ信号の目的は映像を表示することなので、電圧で表現するよりも輝度を基準にした単位の方が都合がよいのです。
そこで、最高の輝度(白)を100IREとする単位が決められました。この単位では最低の輝度(黒)は7.5IREです。ただし、日本では0IREを黒とする方が一般的です。またこのIREを用いると、水平同期や垂直同期の同期パルスは-40IREと決まっています。
同期信号は黒よりも黒いということです。
この信号はモノクロNTSCでは、-40IREから100IREまで変化します。そこで、75Ωで終端された受信側での電圧振幅が1Vp-pで140IREと決めています。
つまり、NTSCでは1IRE=7.14mVです。
かくしてビデオ信号は、映像の振幅が714mV、同期の振幅が286mVで、合わせて1Vp-pの中に膨大な情報を詰め込んでいるわけです。
このIREという単位は慣れないとギョッとしてしまいますが、色の明るさが数字で直感的にわかる便利な指標なのです。コンポジットNTSC以外の映像信号(VGAやコンポーネントNTSC信号など)では電圧の関係が違ってきますが、そのような信号でもIREで表せば同じ明るさを同じ値で表現できるので便利です。
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