ISDN回線上の信号 |
回線とはDSUより向こう側、すなわち電話局とつなぐ点です。これはLI参照点といわれます。この規格はITU-T勧告I.411の日本版、TTC標準JT-I411に定められています。電線はCCPケーブルで、線の太さは0.32mm、0.40mm、0.65mmなどがあります。これは通常の電話線と同じですので、通常の加入電話からISDNへの変更にはユーザー側での変更工事はありません。なお、線が太いほうが伝送特性がよくなっています。
線は通常の電話と同様に2線式です。この2線に双方向の通信と、電力を乗せて送ります。
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ISDNの回線側の伝送速度 |
前述のとおりISDNでは時分割で2重化しています。これは時分割方向制御(TCM)といわれます。
ISDNの基本速度サービス(2B+Dのこと)では伝送速度は64+64+16=144kb/sですが、実際には制御信号や同期信号などが入るので、2B+Dを双方向にした288kb/sより速い320kbpsで送ります。
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ISDN回線の伝送信号 |
回線には、AMI符号が流れます。AMI符号はイーサネットなどでも採用されており、高速なシリアル通信では良く使われる符号方式です。
この符号は、信号"1"を"+1 0"と"-1 0"と交互に送り出します。信号"0"は回線上に"電気信号なし"を送ります。このように交互に送ることで駆動周波数は320kHzなのですがスペクトル的には320kHzの成分はなく、160kHzにスペクトルのパワー密度を集中させることができます。伝送線路は一般的に高い周波数を通しにくいので、伝送周波数を下げることは大きなメリットになります。
また、振幅は6Vです(多分)。
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信号のフォーマット |
ISDN回線の上では、次に示すようなフレームが飛び交っています。このバーストフレームにはBチャネルが20オクテット×2とDチャネルが5オクテット分含まれています。このフレームの塊をDSUと局で飛ばし合い、通信をおこなっています。この時点でBチャネルの伝送容量はDチャネルの4倍になっています。
フレームワードとは、フレームの先頭の位置を示すためのものです。LT→DSU方向の通信のフレームワードは"100000M0"で、DSU→LT方向へのフレームワードは"1000000M"です。フレームワードは1フレームごとに1と0を繰り返します。
CLチャネルには様々な制御信号やループバック信号が含まれています。
1つのフレームには20個のスロット(2B+1)が含まれます。ひとつのスロットの中身は、"BBBBBBBB D BBBBBBBB D"となっていて、Bチャネルが2チャンネル分の1オクテットとDチャネルが1/4オクテット含まれています。20スロットで1フレームが構成されるので、1フレーム中にはBチャネルが20オクテット×2チャネルとDチャネルが5オクテット含まれています。これで、1.178msです。DSU→LTとLT→DSUをあわせると下の図のように通信しています。
この図のようにISDNはLTとDSUの間で、1つの回線(2本線)を時分割で双方向にフレームをやりとりしています。前にも述べましたが、1つのフレームには20オクテットのBチャネルが2チャネルと、5オクテットのDチャネルが1チャネルあります。フレームは2.5m秒ですから、1秒間に400フレーム存在することになり、Bチャネルが8000オクテット/秒、Dチャネルが2000オクテット/秒の速さで双方向に伝送されるわけです。つまり、64kbps×2と16kbpsが双方向に伝送されます。
ところで、光が真空中を伝わる早さは3.0×108m/sですが、電気が伝わるのはそれよりおそく、短縮率を0.7とすればおよそ2.1×108m/sとなります。DSUからNTT局までの距離が2kmあるとすれば、伝送遅延はおよそ10μ秒弱となります。このように伝送遅延が数ビット分になることも珍しくありません。
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ISDN回線への給電 |
ISDN回線では通常の電話回線と同様にNTT局側から電力が供給されてきます。このため、理想的ににはDSUは電源が無くても動作できるはずです。
それはファントム給電などとよばれ、信号伝送の上に電力を上乗せして送る方法です。そのため2本の線には極性があります。
ISDNの回線は電話と同様に2本の線ですが、それにはL1、L2という名前がついています。ノーマル極性はL1線がL2線よりも電位が高い状態で、リバース極性はその逆になります。リバース極性が検出されるとDSUが起動します。
通常の電話線では極性が変わるということは、相手方の電話機が電話を取ったことを意味します。極性の反転だけを見ているので、どちらが高電位という規定はありません。通常の電話ではどちらにL1、L2をつないでもよいのですが、ISDNではそうはいきません。極性を調べるために、極性チェッカーというものがあります。
ISDN回線ではノーマル極性時には、60Vが供給されます。うっかり触ると危険です。給電は39mAの直流定電流でおこなわれます。
私が家にISDNを引いたとき、最初はDSUが回線を認識してくれませんでした。NTTに問い合わせると「局内の工事は行なった。DSUの不良か宅内の接続不良ではないか」というのですが、私は「L1とL2の間に電圧がきていない」と私が言うと、NTTは素直に局内の工事ミスを認めてすぐに再工事してくれました。もし、電圧のことをしらなければ一週間くらいISDN開通が遅れていたでしょう。
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ISDN回線の電気的特性 |
パルスの振幅は、公称6Vo-pです。
平均信号電力は14.5〜17.1dBmの間とされています。
DSUとLTを見込んだ公称入力インピーダンスは110Ωですが、パルスを駆動しているときには110Ω以下です。線路損失は、160kHzの値で最大50dBと決められています。
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