平成14年1月7日朝刊
なひたふ新聞 電子回路が大好きな趣味人「なひたふ」のWebサイト
maruTOPページへ戻る
maru電子回路の豆知識
第0章 基本の豆知識
第1章 部品の豆知識
第2章 個別半導体の豆知識
第3章 オペアンプ回路の豆知識
第4章 ディジタル回路の豆知識
第5章 コネクタと規格の豆知識
5.1 プリンタポート
5.2 RS232C
5.3 VGAコネクタ
5.4 電話線
5.5 ISDN
5.6 LAN
5.7 168ピンDIMM
第6章 画像信号の豆知識
メール
メールアイコン御意見、御感想は
nahitafu@nifty.com
Copyright
このWebページ上で紹介したすべての回路、情報、内容に関する著作権は私、なひたふが所有します。無断転載を固く禁じます。
(C)Copyright 1999-2001 Nahitafu
平成10年2月28日発行.第三種郵便物不認可
ISDN
 ISDNはIntegrated Services Digital Networkの略で、総合サービスデジタル網と言います。音声の電話だけではなく、データ通信やFAXなどを同じデジタル回線を使って総合的にサポートしようというものです。
 ISDNには、たくさんの専門的な用語が登場します。また、接続点という概念が登場し、個々の接続点では信号の波形やコネクタのピン配置が異なってきます。
 ここでは、プロトコルについては深く考えずに、どのような信号がコネクタ上に流れているかを紹介します。
 内容の正しさは確認していません。間違ったことを書いているかもしれませんので、使用には十分ご注意ください。

 また、この豆知識を読めば、ISDNを使った機器を自作できてしまうかもしれませんが、それは決してやってはいけません。ちょっとだけ実験するのも駄目です。あくまでも嗜みとしてご参照ください。
参照点とは
ISDNの参照点
 ISDNは、回線と屋内の配線でまったく異なる電気信号が流れています。ISDNの回線では、時分割で送信と受信が切り替わるピンポン伝送方式を採用している半二重方式ですが、屋内配線では2組の2本の線を利用した全二重方式です。速度も違い、192kbpsを2倍しても320kbpsにはなりません。
 屋内の配線をS/T点、回線をLI参照点といいます。

回線とS/T点の違い
伝送速度と方式
 回線とS/T点では、まったく異なる電気信号が流れます。S/T点に流れている信号は192kbpsです。これは、2B+D=144kbpsに48kbps分の他に、制御信号などを加えているためです。
 一方、回線に流れている信号は320kbpsです。これは2B+1双方向分の288kbpsに、32kbps分の制御信号などを上乗せしているためです。

 DSUはS/T点の信号と回線の信号を相互に変換します。S/T点から回線に送るときには、S/T点用の制御信号を取り去り回線用の制御信号を付加します。逆に回線からきた信号をS/T点に送るときに、回線用の余分なビットを取り去り、S/T点用の余分なビットを付加して送ります。

参照点と、必要帯域
 ここでいう、余分なビットとはフレームの同期をとるために必要なビットです。
 ISDNの回線は2線式(2本の線で電気信号を送ること)です。電気信号を送るには、最低2本の線が必要となります。決して、信号の行きと帰りの線ではありません(2本線が必要な理由をそのように解説している本は根本的な間違い)。
 S/T点は送信と受信用に専用の2線を持っていて、あわせて4線となっています。このため同時に2B+Dの送受信を双方向に行なうことができます。
 2本の線では同時に双方向に信号を送ることができないので、S/T点の信号を回線の信号に変換するためには、高速で電気的なスイッチを切り替えて実現しています。
 一方、通常の音声の電話では、2本の線で双方向の通話を同時に伝送しています。自分の声が受話器から聞こえないのは、音声信号を巧みに引き算をしているからです。

ISDN回線上の信号
 回線とはDSUより向こう側、すなわち電話局とつなぐ点です。これはLI参照点といわれます。この規格はITU-T勧告I.411の日本版、TTC標準JT-I411に定められています。電線はCCPケーブルで、線の太さは0.32mm、0.40mm、0.65mmなどがあります。これは通常の電話線と同じですので、通常の加入電話からISDNへの変更にはユーザー側での変更工事はありません。なお、線が太いほうが伝送特性がよくなっています。
 線は通常の電話と同様に2線式です。この2線に双方向の通信と、電力を乗せて送ります。
ISDNの回線側の伝送速度
前述のとおりISDNでは時分割で2重化しています。これは時分割方向制御(TCM)といわれます。
 ISDNの基本速度サービス(2B+Dのこと)では伝送速度は64+64+16=144kb/sですが、実際には制御信号や同期信号などが入るので、2B+Dを双方向にした288kb/sより速い320kbpsで送ります。
ISDN回線の伝送信号
 回線には、AMI符号が流れます。AMI符号はイーサネットなどでも採用されており、高速なシリアル通信では良く使われる符号方式です。
AMI符号

 この符号は、信号"1"を"+1 0"と"-1 0"と交互に送り出します。信号"0"は回線上に"電気信号なし"を送ります。このように交互に送ることで駆動周波数は320kHzなのですがスペクトル的には320kHzの成分はなく、160kHzにスペクトルのパワー密度を集中させることができます。伝送線路は一般的に高い周波数を通しにくいので、伝送周波数を下げることは大きなメリットになります。
 また、振幅は6Vです(多分)。
信号のフォーマット
 ISDN回線の上では、次に示すようなフレームが飛び交っています。このバーストフレームにはBチャネルが20オクテット×2とDチャネルが5オクテット分含まれています。このフレームの塊をDSUと局で飛ばし合い、通信をおこなっています。この時点でBチャネルの伝送容量はDチャネルの4倍になっています。
ISDN回線上のフレーム

 フレームワードとは、フレームの先頭の位置を示すためのものです。LT→DSU方向の通信のフレームワードは"100000M0"で、DSU→LT方向へのフレームワードは"1000000M"です。フレームワードは1フレームごとに1と0を繰り返します。
 CLチャネルには様々な制御信号やループバック信号が含まれています。

 1つのフレームには20個のスロット(2B+1)が含まれます。ひとつのスロットの中身は、"BBBBBBBB D BBBBBBBB D"となっていて、Bチャネルが2チャンネル分の1オクテットとDチャネルが1/4オクテット含まれています。20スロットで1フレームが構成されるので、1フレーム中にはBチャネルが20オクテット×2チャネルとDチャネルが5オクテット含まれています。これで、1.178msです。DSU→LTとLT→DSUをあわせると下の図のように通信しています。
フレームの切り替え

 この図のようにISDNはLTとDSUの間で、1つの回線(2本線)を時分割で双方向にフレームをやりとりしています。前にも述べましたが、1つのフレームには20オクテットのBチャネルが2チャネルと、5オクテットのDチャネルが1チャネルあります。フレームは2.5m秒ですから、1秒間に400フレーム存在することになり、Bチャネルが8000オクテット/秒、Dチャネルが2000オクテット/秒の速さで双方向に伝送されるわけです。つまり、64kbps×2と16kbpsが双方向に伝送されます。
 ところで、光が真空中を伝わる早さは3.0×108m/sですが、電気が伝わるのはそれよりおそく、短縮率を0.7とすればおよそ2.1×108m/sとなります。DSUからNTT局までの距離が2kmあるとすれば、伝送遅延はおよそ10μ秒弱となります。このように伝送遅延が数ビット分になることも珍しくありません。
ISDN回線への給電
 ISDN回線では通常の電話回線と同様にNTT局側から電力が供給されてきます。このため、理想的ににはDSUは電源が無くても動作できるはずです。
 それはファントム給電などとよばれ、信号伝送の上に電力を上乗せして送る方法です。そのため2本の線には極性があります。
回線の給電方式

 ISDNの回線は電話と同様に2本の線ですが、それにはL1、L2という名前がついています。ノーマル極性はL1線がL2線よりも電位が高い状態で、リバース極性はその逆になります。リバース極性が検出されるとDSUが起動します。

 通常の電話線では極性が変わるということは、相手方の電話機が電話を取ったことを意味します。極性の反転だけを見ているので、どちらが高電位という規定はありません。通常の電話ではどちらにL1、L2をつないでもよいのですが、ISDNではそうはいきません。極性を調べるために、極性チェッカーというものがあります。
 ISDN回線ではノーマル極性時には、60Vが供給されます。うっかり触ると危険です。給電は39mAの直流定電流でおこなわれます。

 私が家にISDNを引いたとき、最初はDSUが回線を認識してくれませんでした。NTTに問い合わせると「局内の工事は行なった。DSUの不良か宅内の接続不良ではないか」というのですが、私は「L1とL2の間に電圧がきていない」と私が言うと、NTTは素直に局内の工事ミスを認めてすぐに再工事してくれました。もし、電圧のことをしらなければ一週間くらいISDN開通が遅れていたでしょう。
ISDN回線の電気的特性
 パルスの振幅は、公称6Vo-pです。
 平均信号電力は14.5〜17.1dBmの間とされています。
 DSUとLTを見込んだ公称入力インピーダンスは110Ωですが、パルスを駆動しているときには110Ω以下です。線路損失は、160kHzの値で最大50dBと決められています。

ISDNのS/T点
 S/T点は、NT1(DSU)とNT2あるいはTEnを接続します。この線は4線式で2B+1の全二重を実現しています。コネクタは10BASE-Tなどのイーサネットで使われているツイストペアケーブルと同じくRJ-45コネクタですが、使用されている電圧が違うのでツイストペアケーブルを流用するのは注意が必要です。イーサネットではツイストペアが一般的ですが、ISDNのS/T点用のケーブルは、きしめんのような平べったいものが一般的です。
S/T点の電気信号

 伝送符号は回線と同じくAMI符号ですが、S/T点は"0"がパルスあり、"1"がパルスなしになっていて、符号の作り方が違います。また、伝送速度は192kbpsなのでパワースペクトルのピークは96kbpsにあります。振幅は750mVopです。
ケーブルのピン配置
Pin端子名称機能(TE)機能(DSU)DSUの端子名称
1a給電部3*無接続 
2b給電部3*無接続 
3c送信+受信+TA
4f受信+送信+RA
5e受信−送信−RB
6d送信−受信−TB
7g無接続**無接続 
8h無接続**無接続 
S/T点のケーブル
*給電部3は、TE-TE間での給電に使うことができますが、オプションです。
**7番8番ピンは給電部2ですが、使用されません。


 この表の、+と−という極性は、フレームパルスの極性をあらわしています。また、DSUはTEに対してファントム給電を行いますが、TEは必ず受電しなければならないわけではありません。むしろ、受電しないほうが国際的なポータビリティーが高まります。
 ファントム給電は、eとfの端子に+が、cとdの端子に-が供給されます。給電の最大電力は420mW、DSUから出力される電圧は34〜42Vです。