◆差動増幅器
差動増幅器は二つある入力電圧の差をとって増幅してくれます。オペアンプ自体差動増幅器なのですが、ここで紹介する差動増幅器は増幅度を自由に設定できます。また、オペアンプ1個で構成できるため、簡単な差動増幅が必要になるときには重宝されます。ただしこの回路はいくつかの欠点ももっています。
◆この回路の動作
この回路を理解するには、V+に電圧のかかった反転増幅器を出発点に考えるとよいでしょう。
Vo=V+-(R2/R1)(V-IN-V+)
この式で、V+の成分とV-INの成分に整理してかくと、
=V+(R1+R2)/R1-V-IN(R2/R1)
ところで、この回路の場合、V+端子にはV+INの電圧を抵抗R3とR4で分圧した電圧が加わっています。V+端子は電流が流れないことになっていますので、V+に電圧のかかった反転増幅器でいうところのオフセット電圧V+は、分圧された入力電圧V+IN(R4/(R3+R4))になります。よって、
VO=V+IN(R4/(R3+R4))((R1+R2)/R1)-V-IN(R2/R1)
さて、この式を簡単にするために、R1=R3,R2=R4として回路を組みますと、複雑なところが打ち消しあって、
VO=(R2/R1)(V+IN-V-IN)
となります。つまり、二つの入力信号電圧V+INとV-INの差をR1=R3とR2=R4の比で設定した増幅度でアンプして出力します。
◆使用例
- ボーカルの入ったステレオの音楽を入力して、右信号と左信号の差をとります。すると、不思議なことにボーカルが消えてBGMだけになります。それは多くの音楽ではボーカルは左右のチャンネルで同じ音量で入るからです。これでカラオケを作る機械が大昔に流行しました。
- ツイストペア線で伝送されてきた信号をシングルエンドに復元できます。こうしてコモンモードノイズを削除します。
- グラウンドから浮いた部分の電位差を測ることができます。センサを使った計測に使います。
◆問題点
この回路の+側の信号入力を見ますと、回路は非反転増幅回路になっています。また、-側の信号入力を見ますと、回路は反転増幅回路になっています。ということは、それぞれの欠点を併せ持ってしまう回路であるともいえます。
- 具体的にいうと、反転増幅回路の問題として入力インピーダンスの低さが挙げられます。反転増幅回路の入力インピーダンスは抵抗R1の値そのものになります。これは大きくても100kオームくらいなので、あまり入力インピーダンスが高くできません。
- 非反転増幅回路の入力インピーダンスは、抵抗R3とR4の和になってしまいます。この値は増幅度とも絡んでくるので、勝手には決められません。
- 非反転増幅器に由来する問題としては、同相入力電圧範囲の問題があります。簡単に言えば、±15Vで動作しているオペアンプの+入力端子に-14.9Vを入力すると誤動作するという問題です。この手の問題のため、非反転側の入力電圧範囲に制限ができてしまいます。
- それから、抵抗値のばらつきの問題があります。R1=R3とR2=R4と決めましたが、この関係にばらつきがあると、正確に引き算してくれなくなります。この問題のため、最低でも金属皮膜抵抗を使うようにし、できれば集合抵抗を使うとよいでしょう。
- 増幅度を変えたいときは面倒です。増幅度を変えたいときには、4つの抵抗の比を保ったまま変化させなければなりません。すると当然ながら入力インピーダンスも変化します。
このような理由から、微小信号の測定やセンサにつないだ計測の目的にはあまり使えません。この回路に入れる信号源はオペアンプの出力にしたり、出力インピーダンスの低いものにします。また、増幅度も固定で使うことになります。主に、オペアンプを使ったアナログ値の演算を行いたいときに使うとよいでしょう。
計測を行うときにはインスツルメンテーションアンプというのを使うことになります。
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この回路はV+に電圧のかかった反転増幅器を発展させた回路の例です
この回路を発展させた回路の例として
を紹介します。
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