インスツルメンテーションアンプ

回路図  工業用、計測用として広く用いられている差動増幅回路です。増幅度の設定を一本の抵抗で行うことができ、入力インピーダンスも高く、また、差動出力も可能です。良く使われる回路なので、この回路をワンチップ化した製品も出回っています。

この回路の動作

 一見して複雑そうな回路ですが、回路の前半と後半で分けて考えるとすこしわかりやすくなります。前半では上下対称な二つのオペアンプで差動出力の増幅回路を作り、後半では差動増幅回路で引き算を行っています。

 まず、各部の電圧と電流を定義しましょう。R1を上から下に流れる電流をI1と決めます。次に、上のオペアンプの-入力端子の電圧をV2とし、下のオペアンプの-入力端子の電圧をV3とします。上のオペアンプの出力電圧をV4とし、下のオペアンプの出力電圧をV5とします。

 次にI1を求めます。I1は抵抗R1の両端の電圧ですから、

I1=(V2-V3)/R1
とかけます。オペアンプの入力端子には電流は流れないので、R2とR3にも同じ電流が流れますから、V4はV2よりI1R2だけ高い電圧になります。また、V4はV3よりI1R3だけ低い電圧になります。
V4=V2+I1R2
V5=V3-I1R3
 こんな回路でもバーチャルショートは成り立っているはずなので、V2=V-INV3=V+INであるはずです。そうすると、
V4=V-IN+(V-IN-V+IN)×(R2/R1)
V5=V+IN-(V-IN-V+IN)×(R3/R1)
特に、R2=R3として、V4とV5の差を見てみましょう。
V5-V4=(V+IN-V-IN)×(1+2R2/R1)

 さて、V4とV5は後段の差動増幅器に入って、引き算された電圧がVOとして出力されます。抵抗値はR4=R5、R6=R7というようにバランスをとっておきます。出力電圧をV4とV5を使って書くと、

VOUT=(V5-V4)×(R6/R4)
 これに前々式を代入しますと、
VOUT=(V+IN-V-IN)×(1+2R2/R1)×(R6/R4)
と、回路の出力が求まりました。

ノウハウ

 この回路も抵抗のバランスが重要です。バランスがちょっとでも崩れると、正しく引き算をしてくれません。バランスをとらなければならない抵抗は上下対称になっている部分です。具体的にいうと、R2とR3、R4とR5、R6とR7です。
 全部同じ抵抗にしてしまってもよいのですが、そうすると、増幅の部分をすべて前段の非反転増幅回路に任せてしまうことになります。オペアンプひとつで何百倍にも増幅するのはちょっときついので、100倍などというゲインが必要ならば後段の差動増幅部にもゲインを持たせるとよいでしょう。
 この回路に使うオペアンプはもちろん高精度オペアンプが望ましいです。

メリット

 反転入力と非反転入力が対称につくられているので、対称性がよいというのが一番のメリットです。また、すべての入力がオペアンプの入力端子に直結しているので、入力インピーダンスが高くできます。
 さらに、回路の増幅度設定は一個の抵抗R1の値を変えることでできるので、簡単です。

デメリット

 非反転増幅で入力しているので、同相入力電圧範囲の問題が生じてしまいます。でも、この回路はセンサなどからの微小な信号を測定する場合に使われることが多いので、あまり問題にはならないかもしれません。
 それよりも、最大のデメリットは回路を作るのが面倒くさいということです。

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この回路は差動増幅器を発展させた回路の例です
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