スイッチ1

 トランジスタを使ったスイッチング回路です。ベースに小さな電流を流すと、コレクタ−エミッタ間が導通し、大きな電流をスイッチングできる回路です。

説明

 この回路は小さなベース電流で大きなコレクタ電流をスイッチできるという回路で、今も昔もいろいろなところで良く使われています。この回路のトランジスタのコレクタは電流を吸い込む機能なので、この回路から電流を吐き出すことはできません。使い方はとしては、VCCなどの電源を「制御したいもの」の電源につなぎ、「制御したいもの」のグラウンドをトランジスタのコレクタにつなぎます。そして、ベース電流をON/OFFすると「制御したいもの」の電流をON/OFFすることができます。

おとしあな

 この回路には意外な落とし穴があります。それは、コレクタエミッタ間飽和電圧と直流増幅率です。たとえば電源電圧が5Vの装置でこの回路を使った場合、トランジスタのコレクタエミッタ間飽和電圧が0.2Vの場合、「制御したいもの」には最大でも4.8Vの電圧しか加えることができません。また、直流増幅率(Hfe)が20のトランジスタを使った場合で「制御したいもの」が1Aの電流を流す必要がある場合には、ベース電流には50mAを流す必要があります。

 なぜか電流がちゃんと流れないとか、「制御したいもの」にかかる電圧が低いと散々デバッグして嘆いた挙句に、原因は単にベース電流とHfeが足りなかったなどという話はよくあります。

良くあるミス

 特に初心者〜中級者にありがちなのが、ベースに直列に入っている抵抗や、ベース−エミッタ間の抵抗を抜かしてしまうことです。

ベースの直列の抵抗はなぜ必要?

 ベースの抵抗を抜かすと、最悪の場合トランジスタは燃えて壊れます。良くある事例では、スイッチなどの入力装置をベースに直接つないで、5Vの電源から直接電流を流すとトランジスタが燃えて困ったという話は良く聞きます。

 なぜなら、トランジスタのベースとエミッタの間はどのように頑張っても0.65V以上にすることはできません。(数千Aの電流を流せば数Vになるが・・・)。0.65V以上にならないところに無理やり5Vを加えることはできないので、どこかで差額の4.35Vを消費しなければなりません。そのためにベースに直列に抵抗が必要なのです。抵抗の値はなんでもいいのですが、あまりベース電流を多く流すとトランジスタは燃えてしまいますし、少なすぎるとコレクタ電流も少なくなってしまいます。だから数百Ωから数10kΩが妥当な範囲です。

 スイッチでなく、ディジタル回路の出力をトランジスタにつなぐときにも、ベースに直列に抵抗を入れなければいけません。さもないと、トランジスタかディジタルICのどちらかが壊れます。

ベースの並列の抵抗はなぜ必要?

 トランジスタの入力に、オープンコレクタ出力やトライステート出力、またはスイッチなどをつないだ場合などは、その信号がオープンになる可能性があります。このような場合に、ベース・エミッタ間の抵抗がないとベース端子が不安定になってしまいます。するとコレクタ電流も不安定にふらふらと流れます。トランジスタを確実にOFFにするためにはベース・エミッタ間に抵抗が必要です。この値も本当に適当で言いのですが、あまり低いと電気の無駄遣いですし、高すぎてもノイズの影響を受けます。10kΩ前後が妥当なところです。

 ディジタルICの使用しない入力端子はプルアップしなければならない、と多くの本には書かれていますが、同様にトランジスタの入力端子もオープンにしてはいけません。

欠点

 この回路はあまり高速なスイッチングはできません。その解決方法はスイッチ3をごらんください。また、リレーやモーターなどのコイルを含んだものをスイッチするときには、スイッチ4をごらんください。また、この回路では負荷としてつなぐ「制御したいもの」のGNDを切る形になります。GNDを共通にして電源をスイッチングしたい場合はスイッチ2をごらんください。
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