定電流回路

回路図  定電流回路はオペアンプの動作を理解する上でうってつけの回路です。ただ、普通オペアンプはあまり出力電流を流すことができないので、出力増強のトランジスタやFETをつけて使います。

この回路の動作

 電流を吸い込むタイプの定電流回路です。どこかから流れてきた電流がトランジスタのコレクタに吸い込まれます。吸い込まれた電流はすべてエミッタに流れるはずです。この電流をICとします。
 コレクタに流れ込む電流とエミッタから流れ出す電流はほぼ等しくなっています。なぜかというと、トランジスタのhfeはおよそ100くらいあるので、ベース電流はコレクタ電流の100分の1しか流れないからです。そういうわけで、エミッタに流れる電流はICとほぼ等しくなります。正確に計算するときはhfeをちゃんと考えなければなりませんが、普通は1%くらいの誤差ですみます。
 この電流ICは抵抗Rを通じてアースされます。そのため、抵抗の上側、つまりオペアンプの-入力端子にはICR1の電圧が生じます。この電圧とオペアンプの+入力端子の電圧が等しくなるように回路は動作します。

 なぜこうなるのかということをもう少し詳しく書きます。オペアンプのViとV-の電圧に差があると、その差を裸利得Aで増幅した電圧がオペアンプから出力されます。

Vo=A(Vi-V-)
 この電圧はトランジスタのベースにかかります。するとエミッタの電位V-はトランジスタの順方向電圧降下Vfだけ低い電圧になりますので、
V-=Vo-Vf
となります。これらを連立させて解くと、
V-=(AVi-Vf)(1+A)≒Vi
になります。最後の近似はオペアンプの裸利得Aがとても大きいということを利用しています。帰還ループにトランジスタが入っていてもちゃんとバーチャルショートが成り立っていることがわかります。これゆえ、回路の出力電流はとなります。
IC=Vi/R1
 なお、抵抗R2はベースに入れた電流制限抵抗で、気休め程度の役割しかありません。入れなくても恐らくは問題ありません。

オペアンプの選定

 この回路に使われるオペアンプは必ずしも二電源型ではなくてもかまいません。単電源で使用してもOKです。それは、オペアンプの両方の入力に加わる電圧がいつも正の電圧であるからです。
 ただし、出力電流を可変にするときは、普通はV+を変えますが、0から変化させたい場合は注意が必要です。+電源とGNDで動く場合は、オペアンプにとっては0Vの入力電圧は負電源と同じ電位なので、同相入力電圧の範囲外になってしまうからです。このような問題のため、単電源でも使用できると釘打たれているオペアンプを使う必要があります。LM324やLM2904などが安くてよいでしょう。

吐き出し型への改良

回路図  定電流源は吐き出し型の方が便利なことがあります。この回路は吸い込み型なので、何とか吐き出し型で使いたいところです。一番素直な解は右の図のようにカレントミラーを使うことです。でも、カレントミラーといえども、正確に電流を流すことは困難なのです。

回路図 上下を逆にして、PNPトランジスタを使えば、吐き出し型の定電流源が作れます。ただし、電流設定を行う電圧は、VCCから測った電圧になってしまいますので、ツェナーダイオードなどを使ってGNDとの間に作った基準電源で設定しても、電源電圧の変動によって流す定電流が変動してしまいます。

誤差とその対策

回路図 このタイプの定電流回路に生じる誤差の最も大きな要因はトランジスタのベースに電流が流れてしまうことにあります。そのため、設定した電圧よりも若干少ない電流が流れます。この値はおよそ1%くらいですが、正確な定電流を流す必要のあるときには工夫が必要です。
 一番簡単な解決は、トランジスタのかわりにN型のMOS-FETを使うことです。エンハンストタイプのMOS-FETは、VGS-ID特性が普通のNPNトランジスタのVBE-IC特性に似ているので、トランジスタ替わりに使うことができます。電圧と電流の特性は似ているのですがFETはゲートに電流がほとんど流れない点が大きく違います。ゲートにはnAやpAという電流しか流れないので、IDとISが本当に等しくなるので誤差を消すことができます。

 流れる定電流の式は同じで、
IC=Vi/R1
になります。

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この回路は差動増幅器を発展させた回路の例です
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