出力増強回路

回路図  オペアンプの出力は一概に言って弱いです。数十ミリアンペアの電流を取り出すことができればよい方です。ここではオペアンプの出力を増強する方法を紹介します。

この回路の動作

 オペアンプの出力を増強するには、プッシュプルのエミッタフォロアが一番です。この回路では、オペアンプの出力の上下にダイオードがついています。このダイオードには抵抗R3とR6を通じてバイアス電流が流れていまして、ダイオードの両端の電圧は常に一定の電圧Vfになっているとします。
 今、上側の回路を考えてみます。NPNトランジスタのベースはVo+Vfの電位になっています。それからエミッタフォロアによって、-VBE下がった電圧がトランジスタのエミッタ電位になりますが、シリコントランジスタとシリコンダイオードを使えば、ほぼVf=VBEになるので、トランジスタのエミッタ電位はオペアンプの出力電圧と等しくなります。
 下側のPNPトランジスタについても同様のことがいえます。回路の出力が+の時は上側のNPNが働いて、出力が-の時は下側のPNPが働きます。このようにして吸ったり吐いたりしながら強調して働く回路をプッシュプルといいます。
 本来ならば、抵抗やダイオードを取ってしまいたいのですが、トランジスタは0.6V程度のベース-エミッタ間電圧がないと動作しません。そのための十分なバイアスを与える回路がダイオードと抵抗R4とR5です。

 この回路の動作は反転増幅器ですが、帰還抵抗を出力の部分からとることに注意してください。入出力の電圧関係は

Vout=-Vin*(R2/R1)
で、普通の反転増幅器と同じです。

部品の選定

 普通はオペアンプは20mAくらいの出力電流しか流せません。そこでこの増強回路を使うわけですが、100mA程度の出力がほしい時には、2SC1815-2SA1015のペアを使い、ダイオードは1S1588でよいでしょう。なお、トランジスタのコレクタに入れてある0.1uFのコンデンサはパスコンなので省略してはいけません。
 トランジスタのエミッタに入っている抵抗は過電流保護用の抵抗で、事故でトランジスタが焼けてしまうのを防ぐためにいれてあります。特にこだわりがなければ10Ωくらいを入れておけばよいでしょう。  基本的には回路の出力Voutとオペアンプの出力Voには電位差はないのですが、ここの間に抵抗を入れてマイナーループを作るのが好きな人もいます。

回路の保護

回路図  それから、出力トランジスタ(Tr3,4)に短絡保護のための回路をいれることもあります。Tr5,6が保護用の回路です。あまりに大きな電流が流れると、エミッタに入れた抵抗の電圧降下が大きくなって、保護用トランジスタ(Tr5,6)がONします。すると出力トランジスタ(Tr3,4)のベース電流を保護用トランジスタ(Tr5,6)が引き抜いてしまうので、出力トランジスタ(Tr3,4)のコレクタ電流はある一定値以上には増えることができません。
 その時の電流値はR5/0.6[V]で決まります。0.6Vというのは保護用トランジスタがONしはじめるベースエミッタ間電圧です。
 具体的な数値としましては、エミッタ抵抗を1Ωにしておけば、約600mAの出力を取り出したときに、保護回路が動作しはじめます。
 下側についても同様に動作します。

ダイアモンド回路

回路図  こだわり派の人はダイアモンド回路という回路を使うこともあります。一見複雑そうですが、PNPのエミッタフォロアとNPNのエミッタフォロアを組み合わせて、さらに上下対称にしているだけです。NPNとPNPを組み合わせることでレベルシフトを互いにキャンセルできます。
 この回路でヘッドフォンを駆動する回路などを作ると音質がよいので、オーディオ関係に重宝されています。

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この回路は反転増幅器を発展させた回路の例です。
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