帰還抵抗の分割された反転増幅器

この回路の存在理由

反転増幅器  この回路は反転増幅回路の増幅度を大きくしたいのだけれども、諸般の事情により帰還抵抗をあまり大きくできない場合や入力抵抗をあまり小さくできない場合に使います。

反転増幅器の諸般の事情

 単純な反転増幅器の増幅度は
Vo=-(R2/R1)Vi
でした。増幅度を上げたい場合には帰還抵抗R2を大きくするか、入力抵抗R1を小さくするしかありませんでした。
 帰還抵抗を大きくすることには限界があります。一般に抵抗の両端には熱雑音というノイズが発生していて、このノイズ電圧は抵抗値の平方根に比例します。また、高い増幅度のアンプというのはたいてい微小信号を増幅する目的でつかうので、ノイズを極端に嫌います。だから、あまり抵抗値を大きくするのは得策ではありません。設計にもよりますが、100kオームから1Mオームでノイズが無視できなくなるでしょう。
 入力抵抗を下げるのにも限界があります。それは反転増幅回路の入力インピーダンスは入力抵抗R1の値そのものになってしまうからです。一般に微小信号は高いインピーダンスの電圧源になっていることが多く、正確に測定するためには回路の入力インピーダンスが高いほうが望ましいからです。
 オペアンプを2つ以上使えば解決できますが、オペアンプ自体がノイズ源となるので、同じ回路を作るならできるだけ少ない数で作りたいものです。

回路の動作

反転増幅器
 この回路でもオペアンプの-入力端子にバーチャルショートが成り立っていますので、入力端子からは
I1=Vi/R1・・・・(1)
の電流がながれこんできます。
 この電流は抵抗R2を通じて、R3とR4にわかれます。それぞれの抵抗を流れる電流をIR3、IR4とします。キルヒホッフの法則より、
I1=IR3+IR4・・・・(2)
となります。電流の分岐点の電圧VMは電流IR4を用いて、
VM=R4IR4・・・・(3)
とかけます。また、VMバーチャルショートで0Vになっているオペアンプの-入力端子の電圧からI1の電流がR2の抵抗で電圧降下を起こして低くなっているので、
VM=-I1R2・・・・(4)
 出力電圧VOはVMの電圧よりIR3R3低くなっていなければならないので、
VO=VM-I3R3・・・・(5)
となります。

未知数は、I1、IR3、IR4、VM、VOで5個あり、式の数も5個あるのでこの連立方程式は解けるかもしれません。(5)式に(4)式を代入して、

VO=-I1R2-IR3R3
(2)式を使って、IR3を消去して
VO=-I1R2-I1R3+IR4R3
(3)式を使って、IR4を消去して
VO=-I1(R2+R3)+VM(R3/R4)
(4)式を使って、VMを消去して
VO=-I1(R2+R3)-I1(R2R3/R4)
まとめると、
VO=-I1(R2R3+R2R4+R3R4)/(R4)
最後に(1)式を使うと
VO=-Vi(R2R3+R2R4+R3R4)/(R1R4)
まとめると、
VO=-Vi{(R2R3)/(R1R4)+(R2+R3)/R1)}
となって、解けました。めでたしめでたし。

 では、この式の意味するところを考えましょう。R4が無限に大きいならば、これは普通の反転増幅器の式になってしまいます。括弧の中の第二項は普通の反転増幅を表しています。
 括弧の中の第一項がこの回路の特徴です。R4がとても小さいとき、この回路の増幅度は無限大になってしまいます。もちろん、裸利得と電源電圧はどうしても超えられません。この(R2R3)/(R1R4)が示すように、R4を変化させればそれにつれて増幅度が自由に変えられます。
 たとえば、R1を高く設定したとしましょう。100kΩとします。このような入力インピーダンスで100倍の増幅器を作るには普通の反転増幅回路では10MΩの帰還抵抗になってしまってあまりよろしくありません。この回路では帰還抵抗を100kΩずつにしてもR4を1kΩにすれば100倍の増幅度を得られます。
 高い抵抗値の抵抗を使わなくてもすむということは、熱雑音をおさえる上でとても大きな利点です。

この回路の限界

 でも、この回路も万能ではありません。それは、入力オフセットの影響を大きく受けてしまうからです。

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この回路は反転増幅器を発展させた回路の例です
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