積分回路

回路図  オペアンプの帰還抵抗の代わりにコンデンサをいれると、積分回路ができ上がります。この回路は入力電圧を時間で積分して出力する回路で、信号処理なんかではとてもよく使われます。

この回路の動作

 この回路の動作を解くには二通りの方法があります。ひとつは微分方程式を用いて解く方法で、もうひとつはラプラス変換を用いて解く方法です。一般的にラプラス変換の方法が簡単ですが、両方解けるようにしておくとよいでしょう。

微分方程式で解く

 出発点は回路の各部の電圧や電流、コンデンサ中の電荷の量を微分の式で記述することです。オペアンプにバーチャルショートを仮定すると、-の入力端子の電圧は0Vなので、入力電流はVi/R1になります。この電流はコンデンサに充電されます。電流をIとおけば、コンデンサ中の電荷はQ=∫Idtとなります。そして、出力端子の電圧はコンデンサの電荷Qをコンデンサの容量Cで割ったものです。まとめると、
I=Vi/R1
Q=∫Idt
Vout=-Q/C1
これらを解くと、
Vo=-∫(1/C1R1)*Vi(t)dt
となります

ラプラス変換で解く

 反転増幅器の式
Vo=-(R2/R1)Vi(t)
においてR2のかわりにC1が入ったわけですから、C1のインピーダンスをsC1とおいて、R2の部分に代入してやればよいでしょう。すると、
Vo=-(1/sC1R1)Vi(s)
となります。これを逆ラプラス変換するのですが、真面目に複素積分してもよいし、ラプラス変換表を見てもよいし、これくらい覚えてしまってもよいでしょう。
Vo=-∫(1/C1R1)*Vi(t)dt
なお、1/sをラプラス変換すると∫になります。

何に使うのか

注意点

 積分器として使う場合には、コンデンサの漏れ電流に注意しなければなりません。どんなコンデンサでもわずかに電流がもれています。特にアルミ電解コンデンサなどは漏れ電流が多いコンデンサとして有名です。漏れ電流が多いと、積分したはずの電流が漏れてしまっては困るわけです。その上、オペアンプの入力端子からはわずかですが電流が流れ出てきています。
 そのため長時間の積分をするのは困難です。漏れの少ないコンデンサはポリプロポレンコンデンサですが、それでも長時間の積分は困難です。6800pFのポリプロピレンコンデンサに15Vの電圧で充電していたとします。コンデンサ中の電荷の量は102nCです。このコンデンサに、漏れやオペアンプのバイアスで1nAの電流が流れた場合、約2分しか持ちません。
 それでも長時間の積分をするならば、入力バイアス電流の少ないCMOS入力タイプのオペアンプを選ぶのは当然です。最近ではpAやfAクラスのオペアンプも入手できます。fAクラスのオペアンプが入手できても、プリント基板に付着した水や手の油、ヤニなどが導体となってpAくらすの電流が流れ出てしまいます。そのため、オペアンプの-入力端子をテフロン端子にしたり、アルコールで洗浄したり、微小信号測定のような技術が必要になります。
 でも、短時間の積分やアバウトな積分でよいのなら、電解コンデンサやラフなはんだ付けでも十分実用になります。 回路図

 また、積分の開始タイミングを与えるためには、コンデンサの両端をスイッチでショートします。この瞬間にコンデンサの電荷が0になるので、積分の開始タイミングになります。FETを使った電子スイッチを使う場合もあります。機械的スイッチの場合にスイッチに直列に抵抗が入っていますが、これはコンデンサの電荷を一気に放電してはいけないからです。一気に放電するとコンデンサの寿命は短くなり、スイッチも溶断してしまうことがあります。0.1uF程度のコンデンサでも事故は起こりますので、かならず100Ω程度の抵抗を入れる癖をつけましょう。


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この回路はコンデンサ付きの反転増幅器を発展させた回路の例です
この回路を発展させた回路の例として を紹介します。
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