微分回路

回路図  反転増幅器の入力抵抗の代わりにコンデンサを使うと、微分回路をつくることができます。ただ、この微分回路は原理を示すものですから、実際にはノイズと発振でまともにつかえないでしょう。実用的な微分回路は次のページで紹介します。

この回路の動作

 まず入力端子からコンデンサを通って流れてくる電流を求めます。コンデンサに流れる電流ですから、コンデンサの電荷量の微分になります。
I=dQ/dt
 また、コンデンサにたまっている電荷にはQ=CVの関係があります。ここでいうVはコンデンサの両端の電位差ですから、オペアンプの-入力端子電圧(V-)と回路の入力電圧(Vi)の電位差ということになります。そして、このオペアンプには負帰還がかかっているのでオペアンプの入力端子の電位差は0になっているはずですので、結局、コンデンサの両端の電圧というのはGNDから測った回路の入力信号電圧Viそのものになります。これを用いて、コンデンサに流れる電流を書き下すと、
I=C{dV/dt}
とかけます。オペアンプの入力端子には電流が流れないのでこの電流はすべて抵抗を通じてオペアンプの出力端子へ流れます。よって、オペアンプの出力端子の電圧は
I=-RC{dV/dt}
になります。つまり、入力電圧の時間微分を出力してくれます。

問題点

 この回路は次に述べるいくつかの問題のため、まともに動作しません。
  1. 周波数特性  微分回路は、入力信号の周波数と増幅度が比例する回路です。そのため、高い周波数の信号はとても大きく増幅してしまいます。
     理想オペアンプならば、無限に高い周波数で無限の増幅度になるのですが、実在オペアンプでは裸利得を超えることはありません。
     オペアンプの出力電圧は電磁誘導や漏れ電流となってわずかに入力に戻りますが、高い周波数の増幅度が高いので、わずかに戻った高周波電流が増幅されてループができてしまいます。このループのゲイン(減衰と増幅をあわせた増幅度)が1を超えると発振しやすい危険状態になります。そしてちょっとしたはずみで、ループでの位相の差が360度の整数倍になる周波数で発振してしまいます。
     微分回路はこのような理由で発振しやすいので、まともには動きません。
  2. 入力にコンデンサが接続されているのも問題になります。コンデンサは直流の電流を流しません。しかし、オペアンプの入力端子からはわずかではありますが、入力バイアス電流というものが流れ出ています。この電流が帰還抵抗を通じて出力側へ流れてくれればよいのですが、実際にはこの電流でコンデンサが充電されてしまうことがあります。

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この回路はコンデンサ付き反転増幅器を発展させた回路の例です
この回路を発展させた回路の例として を紹介します。
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