常軌を逸して基板を作る

 いままでの手順は、誰でもやってますし、今更とりたてて説明するほどでもありません。ここからが本題です。

レーザーで感光基板を焼く

 レーザーといっても秋葉で簡単に手に入るような数ミリワットのものではだめです。今回は出力8Wのアルゴンイオンレーザーを使って感光基板に当ててみました。

 やり方は簡単で、ピンセットで感光基板をつまんで光の筋にかざすだけです。反射や散乱する光がとても強烈で、焼いている最中のプリント基板は直視できません。焼くと下の写真のようになりました。なお、下の写真は基板を現像をしたあとの姿です。3秒くらい当てると銅が焦げ始めます。このくらい照射すると、現像をしなくても感光塗料は見えなくなりました。危険なので決してまねしてはいけません。


 ところで、重要なことは、感光基板は紫外線でなくても感光したことです。紫外線は波長が300nm(ナノメーター)ていどですが、今回使ったレーザーは波長が500nm台で可視光線です。この波長でも感光基板が作れるということは、感光塗料が熱で変性したか緑色の光でも感光するかということです。

エキシマレーザーでやったらどうなるんでしょうね。


赤外レーザーで感光基板を焼く

こんどは出力200mW、波長790nmあたりのチタンサファイアレーザーです。これは可視光と赤外線のちょうど間あたりで、少しですが目でも見えます。このレーザーで感光基板を焼いている写真がこれです。10分以上焼いても、感光塗料はほとんど変性しませんでした。よーく見ると感光塗料の緑色の色が変わっているようなきもするのですが、ほんとに気のせいかもしれません。
現像してももちろんだめでした。790nm程度の波長の光では感光基板は感光しないようです。


紫色半導体レーザーで感光基板を焼く

blue laser  最近、何かと話題の紫色半導体レーザーを使って感光基板を焼いてみました。このレーザーは人によって紫色と言ったり、青色と言ったりいろいろな呼ばれ方をしていますが、青紫色のとても綺麗な色をしています。波長は約400nmです。

blue laser  試しに、プリント基板の裏に当ててみますと白く見えます。でも写真にとると紫です。人間の目に白く見えるのは、エポキシと光が相互作用して光の吸収と放出を起こし、より長い波長のいろんな色の光が混ざって出てくるからでしょう。今回も使用したプリント基板は、サンハヤトのTEST-Kです。
 人間の目はあまりスペクトル分解能がよくなく、恐らくはカメラのセンサとも色を感じる波長が違うので、写真と目で見た映像は結構色が違って見えることが多いと思います。

blue laser  さて、早速焼いてみましょう。ビームの大きさは横6mm、縦2mm程度の楕円形です。光の強さは約5mW。この光で感光基板に5分あててみました。
 なお、部屋は蛍光燈の光で満ち溢れていますが、部屋の明かりに1時間くらいさらしても感光基板は大丈夫です。

blue laser  するとどうでしょう。ばっちり焼けています。現像しなくても感光塗料の色が変わっていたので、焼けたのは一目でわかりました。

 790nm-200mWの赤外レーザーをいくら当てても感光基板は焼けなかったのに、400nm-5mWの青色レーザーでは簡単に焼けてしまいました。でも、ビームの直径よりも焼けた面積がずいぶん大きいです。焼けた部分は横11mm程度ありました。

blue laser  恐らくは、光をあてすぎなのでしょう。今度は同じ基板を再利用して、同じ条件で1分焼いてみました。

blue laser  これでもばっちり焼けています。しかも境界線のメリハリがはっきりしています。

blue laser  こんどはレンズで集光させて焼いて見ます。スポット径は肉眼では観察できないほど小さくなっています。0.3mm程度でしょう。これで15秒焼いて見ます。

blue laser  これでもばっちり焼けています。ビーム径よりも焼けた面積の方が大きいので、焼き時間が長かったのでしょう。

 次は、先ほどのレンズで集光させた光を使って、プリント基板を手で直線的に動かしながら焼いてみました。15秒ほどかけてゆっくりと引っ張ります。両手がふさがっているので写真はありません。

blue laser  これでもばっちり焼けています。焼きあがりはとてもすばらしいといえるでしょう。実測で0.5mmの細い線が書けています。

 最後に、集光したビームの中で、感光基板を手で持って、コーヒーをかき混ぜるよ うにくるくると回してみましたが、焼けませんでした。ある程度の時間ビームがあたっていないと感光物質は変性しないのかもしれません。その時間は紫色レーザーでは1秒くらいだと思われます。

 紫色の半導体レーザーはプリント基板を作る光源として、とても有効に使える可能性があります。


YAGレーザーで感光基板を焼く

YAG laser 装置  Nd:YAGレーザーは、1064nmの赤外線で発振します。用いたYAGレーザー装置はフラッシュランプという強烈な光でYAGの結晶を励起してレーザー発振を起こさせるもので、パルスレーザーです。この赤外線は目には見えませんが、あまりにも強烈な光なので物にあたると激しい音を出します。アルミホイル程度なら穴があいて貫通します。

YAG laser  非線型結晶という特殊な結晶にこのような強烈な光を与えると、二倍の周波数の光が作り出されます。1064nmの二倍の周波数は532nmの緑色の光なので、今回使用したレーザーでは、非常に強烈な赤外線と強い緑色の光が混ざった光が出力されます。
 では早速、これらのレーザーを感光基板に当ててみましょう。

YAG laser 基本波  ごらんの通り、感光基板を現像しなくても銅箔が見えるようになってしまいました。この状況は、感光したというよりは強烈なレーザーによって感光膜が吹き飛ばされたという感じがします。

YAG laser 二倍波  これは光学的フィルタを用いて、YAGレーザーの緑色の部分だけを当てた様子です。同じく感光膜が吹き飛ばされていますが、基本波(赤外線)を当てたときよりは吹き飛ばされ具合が弱い気がします。

YAG laser 現像後  感光基板を現像してもこれ以上の変化はありませんでした。アルゴンイオンレーザーの時との違いは、感光膜が吹き飛んでも後ろの銅箔がほとんど焼けてしまわないことです。これが光の波長による違いなのか、それともレーザーによる加熱され具合の違いなのかはわかりませんが、YAGレーザーの方が銅箔を傷つけずに狙った場所のみを効率よく感光(?)させることができそうです。


エキシマレーザーで感光基板を焼く

Excimer laser  パルスレーザーの王様、エキシマレーザーで焼いてみました。波長は200nm程度で紫外線です。いろいろな物にあたると蛍光を発するので間接的に目に見えます。パワーはとても強力です。
 実際に焼いたのは1999年のことですので、うろ覚えですが確かに焼けました。ただし、エキシマレーザーの出力光が、エキスパンダで広がっていたためか強度が弱かったために、思ったほどは焼けませんでした。それでもパルス一発で十分に感光しましたが・・・
 写真はありません。
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