ポリスイッチの遮断特性

平成20年7月26日

ポリスイッチとは

    ポリスイッチポリスイッチ(レイケム・タイコ・エレクトロニクス社の登録商標?)というのは、リセット可能なヒューズです。

    ヒューズとポリスイッチはどちらも過大な電流が流れたときに遮断する部品ですが、ヒューズは一度切れてしまうと交換が必要なのに対し、ポリスイッチは自動的に復帰し繰り返し使用することができます。

    材質的にはポリスイッチは導電性ポリマーを用いたサーミスターの一種です。温度が低いときには抵抗値は十分に低いのですが、過大な電流が流れるとジュール熱によって温度が上昇し、温度上昇によって抵抗値が上昇し、さらに発熱してさらに高抵抗になり、あるところで落ち着きます。最終的には微小な電流しか流れなくなって回路は保護されますが、その微小な電流でもポリスイッチは発熱して高抵抗を維持します。
     

RXEF050の特性

    本基板で採用したRXEF050はデータシートによると、I_Hで規定される保持電流値(最大0.50A)までトリップせず、I_Tで規定されるトリップ電流値(最小1.00A)でトリップするようになっています。トリップ時間は2.5A流したときに、最大4秒となっています。平常時の抵抗値は1Ω弱、トリップ後に室温に1時間放置した際の抵抗値は1.17Ωとなっています。

    またデータシートによると、RXEF050は1Aの電流でトリップするには13秒、2Aで4秒、4Aなら0.6秒ほどかかるとされています。短い時間でトリップさせるには、十分に大きな電流を流すか容量の小さいポリスイッチを使わなければなりません。しかし、容量の小さいポリスイッチは直列抵抗が高くなりますし、保持電流、トリップ電流ともに小さくなるので選定は難しいところです。おそらく個体差もあるでしょう。

    また、定格0.5AのRXEF050をトリップさせるには、最低でも0.8Aは必要です。この場合は1000秒程度かかるので、使っているうちにいつのまにかトリップするという感じです。

    ポリスイッチのトリップ時間

    図1 ポリスイッチのトリップ時間(データシートより抜粋)
    クリックで拡大します

遮断特性の実験

    実際に次の図のような実験回路を作り、ポリスイッチに流れる電流を測定してグラフにしてみました。電源投入直後は3.0A(使用した直流電源でのリミット)の電流が流れていましたが、約0.7秒でポリスイッチの保護が働き始め、その後電流が急激に減り、約2秒後にはUSBの取り出せる最大電流である500mA程度にまで制限されたことがわかります。

    ポリスイッチは回路が切断されるわけではなく、連続的に電流が減るという点がヒューズと異なります。実際にはデータシートに記載されているトリップ時間よりも早く、安全な電流まで減るでしょう。

    実験回路の構成

    図2 実験回路の構成(ポリスイッチにあえて大電流を流して、電流の変化を測る)

     

    測定された電流波形

    図3 測定された電流波形

ポリスイッチの難しいところ

    ポリスイッチは、定格の電流で即座に遮断されるわけではありません。定格の電流を超えると「いずれ」遮断されます。また、遮断されたあとも保持電流が流れます。

    その「いずれ」が1秒後なのか、1分後なのか、1時間後なのかはわかりませんが、オーバーした具合が小さければ遮断までに非常に長い時間(数時間とか)を要します。

    RXEF050に3A程度流した場合でも、1〜2秒間は電流が流れました。素子の温度が上昇するまで切断されないのです。(トリップした後はかなり熱い)

    そのため、目的の電流までは絶対に遮断されず、目的の電流が来たら即座に遮断したい、という使い方はできません。中間の領域が非常に大きいデバイスといえます。

     

 

chickens_back.gif 戻る

 Copyright(C) 2008 NAITOU Ryuji. All rights reserved. 無断転載を禁ず