全波整流(絶対値)回路

回路図  理想ダイオードを使って、絶対値回路を作ることができます。この回路は信号処理などで使われることがあります。

この回路の動作

 絶対値回路は全波整流回路とも呼ばれます。これは理想ダイオード回路の後ろに加算増幅回路をつけただけの構成です。この回路に使う抵抗の値はすべて同じ値にしてください。そうすると増幅度1倍の絶対値回路になります。
 この回路の左半分は理想ダイオード回路で、右半分は加算増幅回路です。 入力電圧Vi<0のとき、理想ダイオードはOFFですので、回路の出力はR5を通じてきたViを反転増幅しただけの-Viになります。
 入力電圧Vi>0のとき、理想ダイオードはONして-Viの電圧を出力します。R3とR4とR5は同じ値にしてあるので、理想ダイオードの出力はR5の直接入力に比べて加算器に2倍の効果で効いてきます。反転増幅器の入力は(-2Vi+Vi)が加わったものと考えてよいわけです。すると出力はViになります。

結局、Vi>0なら出力はVi、Vi<0なら出力は-Viになるので、絶対値を取る回路が作れるわけです。

問題点

 一見便利に見えるこの回路ですが、実際にはなかなかうまく動いてくれません。それは、入力が正の場合と負の場合で回路の使われるオペアンプの数が違うことや、抵抗値のばらつき、ダイオードの動作速度によります。
 入力電圧Vi<0の時、前段のオペアンプは使われませんので、入出力の遅延はオペアンプ一段です。入力電圧Vi>0の時、前段のオペアンプは使われて、後段のオペアンプの入力にいっしょに入ってきます。入力信号そのものと、ちょっと送れた反転成分が同時に入ってくるわけです。オペアンプの動作速度はあまり速くはなく、周波数が高くなってくると、二つの成分の位相の遅れによって波形が乱れてきます。

 また、この回路につかう抵抗は特性がよくそろっていなければなりません。同じ店でまとめ買いするのは当然として、金属皮膜抵抗や金属薄膜抵抗、薄膜型金属皮膜集合抵抗などを活用するチャンスでもあります。とくに集合抵抗を使うことがもっとも望ましいでしょう。
 それでも、正確な絶対値回路を作ることは簡単ではありません。


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この回路は理想ダイオード回路を発展させた回路の例です
この回路を発展させた回路の例として を紹介します。
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