この回路には注意しなければならない点がいくつかあります。まず、ツェナーダイオードは、ものすごい電位差をその中に持つデバイスです。たとえて言うならば滝が流れているようなものです。そのため、ツェナーダイオードは広い周波数領域で大きなノイズを発生させます。一定の電圧であってもノイズが乗っかっていては、定電圧回路としては失格なので、ノイズをとるためにそばにコンデンサをくっつけます。このコンデンサは積層セラミックの0.1uFでよいでしょう。また、余裕があれば数百〜数キロオームの抵抗と数μFのタンタルコンデンサでローパスフィルタをつけることもあります。
ツェナーダイオードは温度係数が複雑な素子です。温度係数はツェナー電圧によって異なりますが、5.6Vのツェナーダイオードでは温度係数が0になると聞いたことがあります。
ツェナーダイオードを使うよりももっと高精度で温度に左右されない基準電源を作るために、専用のICがいっぱい出回っています。代表的なものではLM385などがあります。これらはれっきとしたICですが、使い勝手がツェナーダイオード並なので、ツェナーダイオードの記号で書くことが多いようです。
さらに、温度安定性を重視するならば、LM399のようなヒーター内蔵の基準電源ICを使います。これは効果ですが、ヒーターが内蔵されていて、内部温度を一定にしているので外気の温度に左右されにくい素子です。